腸脛靭帯炎の症状について
腸脛靭帯炎とは膝の外側に痛みが出る症状で、ランニングやジャンプなどの動きを繰り返すスポーツなどを行うと出現すると報告されています。
腸脛靭帯は名称こそ靭帯とついていても、組織や働きとしては靭帯ではなく腱として機能しています。
大腿骨の骨の形状からどうしても腱と骨との間に摩擦が生じやすい場合は手術を選択するランナーもいます。
腸脛靭帯炎を起こすランナーの動きの特徴としては、共通しています。
それは、足をついている時にひざが内側へ入り、足部の内側のアーチがつぶれ、足先が外側へ向く動き(外返し)が大きくなることです。
knee in-toe out(ニーイントーアウト)と言います。
これを修正するための筋力トレーニングやリハビリを実施することが予防・リハビリの際にも重要とされています。
しかし、軽症のうちは痛みも軽い場合が多く、練習も継続できることから、だましだましランニングを続けたり、リハビリや筋トレを実施しているにも関わらず、痛みなどの症状が長引いてしまう事があります。
この長引くタイプについてはさまざまな点から対策が提案されていて、整形外科では炎症・痛みのある部位の周囲にヒアルロン酸や生理食塩水の注射(ハイドロリリース)をして奏効する場合もありますが、症状の変化が認められないこともあり決定的なものはありません。
当院の経験では皮膚・筋膜の硬さが痛みのあるひざ周囲だけでなく全身に広がっているケースを多く経験しています。
そして、症状を長引かせていたランナーのほとんどが専門家による全身の筋膜の引っ張りを考慮した施術を受けず、筋膜の硬さ・癒着を放置することで痛みなどの症状を長引かせてしまっていました。
腸脛靭帯炎の原因は?
腸脛靭帯は大腿筋膜張筋、外側広筋、大殿筋、中殿筋の筋膜が合流し厚くなったものです。
腸脛靭帯炎の発生原因については、さまざまな因子が関係していますが、
硬くなった腸脛靭帯の状態でランニングなど繰り返し(使いすぎ)膝を曲げ伸ばしする動作を行うと、腸脛靭帯と大腿骨外側顆が擦れることで炎症が起こり痛みが生じます。
特にランニングをすることで発症することが多いためランナー膝とも呼ばれています。
その他の因子には、急激な運動負荷の増加、股関節周りの柔軟性不足、接地の際に膝が内側に入るなど動きのエラーによる局所的なストレスに関係するものがあります。腱の回復の観点では、アルコール摂取、血流の少なさや喫煙があります。
また、あまり意識される事が少ない、運動負荷に対する耐久性と回復力の低下と睡眠・食事の質の悪化も関係しています。
この中でも、腸脛靭帯炎を長引かせているランナーで、見落としされがちな因子3つについて、考えてみたいと思います。
それは、「運動負荷に対する耐久性と回復力」と「睡眠と食事」、「痛めている部位と全身の血流改善」です。
ランナーの方は、日々ランニングや筋トレなどのトレーニングをしていると思います。
その中で皆さん存じの法則として、いきなり強い負荷をかけない、ということがあります。
強い負荷を急激にかけるとケガにつながりやすいからです。
それでは、なぜいきなり強い負荷をかけるとケガをしてしまうのでしょうか?
それは、「負荷」と「体の負荷に対する耐久性・キャパシティ(体のキャパ)」を天秤にかけた際、「負荷」が強過ぎるために、体のキャパが対応できず、組織が壊れてしまうからです。
運動による体への「負荷」は腱にある細胞・組織は一時的にダメージを受けます。
しかし、その後に受けた負荷の大きさに対応できるように、腱の細胞・組織は強くなる反応(回復)を起こします。
したがって、腱をはじめとするあらゆる腱・骨膜などの組織は適度な負荷を加え続けることで、強くする事ができるのです。
この「体のキャパ」が負荷に対して追いつこうとする反応・回復の早さは、さまざまな因子に影響を受けます。それは皆さんの生活習慣の中に隠されています。
それは、運動負荷に対する回復の他に「睡眠と食事」、「痛めている部位と全身の血流改善」。
この2つについて質を高めるよう日常生活を過ごすことで、回復を早めて体のキャパを高め、早くランニングに復帰したり、ケガなくランニングを継続できることにつながるのです。
この2つ中でも重要なのが「睡眠と食事」です。
あまりにも当たり前すぎて、あえて意識することはないかもしれません。
ケガをしている際はウエイトコントロールのために食事を減らしがちになり、走らないために夜スムーズに寝付けず、つい携帯電話チェックしたり、SNS等を見ているうちに寝る時間が遅れ、睡眠時不足になってしまう方は多いのではないでしょうか?しかし、このことが回復に必要なケガの際や強度の高い練習で疲れた体には一番良くないことなのです。
より早く組織を修復し、体のキャパを回復・向上させるためには、活動に見合うカロリー摂取と、三大栄養素・微量栄養素のバランスの良い摂取、さらに、十分な睡眠時間と質の良い睡眠を心がけることが重要です。
このような考え方を専門用語では「load vs. capacity モデル」と呼ばれています。
さらに、重要な要素として、「痛めている部位と全身の血流改善」があります。
ケガをした直後には、炎症を悪化させないために、痛めた部位の血流制限のためのアイシングが行われます。
ですが、その後は血流を改善するような温熱療法(入浴・温泉・サウナなど)や痛めている部位に過剰な負荷が加わらない程度で、有酸素運動(スイミング、自転車エルゴメーター)を行う事が必須です。
しかし、腸脛靭帯炎のような痛み症状を長引かせている場合には、違和感や痛みを少しでも感じたら、すぐにアイシングをしたり、運動を控えてしまっているケースが非常に多いのです。
また、ランニングできず汗をかかないためか、入浴時もシャワーで簡単に済ませることが多く、痛めている部位や全身の血流を積極的に改善することを無意識に妨げてしまっているのです。
腸脛靭帯炎・鵞足炎の痛み症状でランニングが十分できなかったとしても、サウナ・温泉にしっかり浸かることやスイミングなどの全身の血流を良くする運動を積極的に実施する事が、回復を早めて体のキャパを高める事につながります。
また、回復力を妨げないためには、ストレスも重要な要素です。
走れないことのストレスや日頃から仕事などでストレスを抱えていると、ケガをしていなくても回復力を低下させて、ケガをしやすくしたり、ケガをしている際にはケガが長期化しやすいことが報告されています。
これは自律神経の働きが関与していると考えられます。
走れないことや仕事のストレスを溜めずに、楽観的な思考で、「絶対復帰できる!」と思い続けて日々過ごすことが、回復を早めるためにも非常に重要な事なのです。
「運動負荷に対する耐久性と回復力」と「睡眠と食事」、「痛めている部位と全身の血流改善」これらの要素を十分に踏まて、生活習慣の変更や施術、運動指導など、多角的な視点でアプローチがなされなければ、腸脛靭帯炎・鵞足炎の痛みは長期化する可能性が出てきてしまうのです。不幸にもこのような状態に陥ってしまっているランナーの方を日々たくさんみています。
しかし、上記の内容を生活の中で1つずつ修正していけば、元のランニング状態や日常生活に戻れるでしょう。
腸脛靭帯炎の治療は?
腸脛靭帯が膝を曲げ伸ばしする際に骨と擦れて痛みが生じているため、太ももの外側の筋や靭帯の柔軟性(滑走性)を改善する必要があります。
また、腸脛靭帯の膝付近での癒着の改善も行います。
腸脛靭帯は大腿筋膜張筋と大殿筋が腸脛靭帯へ移行するため膝関節周囲だけでなく股関節周囲の柔軟性改善も重要となります。
また足関節周囲の問題により足裏の小指側に体重が乗りやすくなり、その結果重心が外側へシフトするため太もも~膝外側周囲に負担が集中することで腸脛靭帯炎を発症することも多くあります。
当院では膝外側周囲の痛みに対する治療はもちろんですが、どうして膝外側に痛みがでてしまう原因をしっかりと評価し、膝周囲だけではなく、股関節や足関節周囲を含め体の正しい使い方(アライメントの修正)に重点を置き施術を行っています。
もし頑固な膝の痛みでお困りであれば、一度ご相談ください!
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